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老後の貯金はいくらあればいい?目安金額や調べ方、堅実にためる方法を解説します
現役世代が老後を迎えた時の年金不足が懸念される昨今、老後資金を自分で準備しなければならない事態となっています。そのため老後生活に入る前に、資産運用で老後資金をためておこうと考える人も多いです。
しかし、老後の貯金はいくらあれば安心なのでしょうか?今回は老後生活のために必要な貯金について、一般的な金額、具体的な金額の調べ方、老後資金をためる方法などを交えて解説します。
老後のために貯金はいくらあればいい?
老後資金についての考え方は、以下の4点がベースとなります。総務省統計局の最新データをもとに説明しますので、ご覧ください。
老後のために必要な貯金目安は2000万円
高齢夫婦無職世帯(65歳以上)の1ヶ月の収支は、「18,525円の赤字」という結果が出ています。そのため、この赤字部分を自分で保有している金融資産で補わなければなりません。人生100年時代となった現在では、あと35年生きると考えると生活費だけで約770万円が不足することになります。
さらに医療費増加分が2人で約500万円、葬儀代が2人で400万円、自宅リフォーム費用が約100万円、車の買い替え費用が約200万円など発生すると想定します。これらをすべて合計すると、老後に最低限必要な貯金額は約2,000万円となります。
また予定外の出費なども考えると、余裕を持って約2,500万円の貯金があった方が安心だと言えるでしょう。
夫婦か独身かによって必要な金額が変わる
夫婦と独身で比較すると、老後に最低限必要な金額は以下のように変わります。
平均月額 |
夫婦高齢者無職世帯 |
高齢単身無職世帯 |
---|---|---|
実収入 |
236,576円 |
135,345円 |
消費支出 |
224,436円 |
132,476円 |
非消費支出 |
30,664円 |
12,271円 |
収支合計 |
-18,525円 |
-9,402円 |
参考:「家計調査年報(家計収支編、令和3年)」|総務省統計局
【老後35年間で必要となる貯金額】
項目 |
夫婦高齢者無職世帯 |
高齢単身無職世帯 |
---|---|---|
生活費不足分 |
約770万円 |
約390万円 |
医療費増加分 |
約500万円 |
約250万円 |
葬儀代 |
約400万円 |
約200万円 |
自宅リフォーム費用 |
約100万円 |
|
車の買い替え費用 |
約200万円 |
|
合計 |
約2,000万円 |
約1,100万円 |
夫婦2人では約2,000万円必要ですが、独身でも約1,100万円必要となることがわかります。
求める生活レベルによって必要な金額が変わる
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和元年12月発行)」によると、旅行に行くなど老後にゆとりある生活を送りたい場合に想定される必要生活費は「月額36.1万円」です。このような充実した時間を送るには、夫婦2人で月額実収入約23.7万円に対し約12.4万円が不足するという計算になります。
ゆとりある老後生活を送るための生活費(夫婦、35年間) |
---|
・不足額約12.4万円×12ヶ月×35年=約5,200万円 |
夫婦2人で一般的な老後生活を送るためには、約2,000万円貯金しておく必要があります。これに対し、趣味やレジャー代を考慮したゆとりある老後生活にするには、生活費用だけでも約5,200万円の資金を準備しておく必要があるのです。
このようにどのような生活レベルを求めるのかによって、必要な金額は大きく変わっていく点に気をつけましょう。
老後のために貯金を始めるタイミングは?
金融広報中央委員会の最新データによると、老後生活を目前に控えた60歳代の金融資産保有額の平均は2,427万円となっています。内訳は以下のとおりです。
比率で一番多いのは「3,000万円以上(22.8%)」ですが、「100万円未満(6.4%)」や預金等を行っていない「非保有(19.0%)」を含めると、2,000万円に満たない人が60歳代全体の65%以上となっていることがわかります。さらに貯金が充分ではない人も多いようです。
金融資産の平均保有額について、その他の年代別ではどのようになっているのでしょうか?表にまとめましたので、ご覧ください。
【金融資産の平均保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)世帯主の年齢別】
20歳代 |
212万円 |
---|---|
30歳代 |
752万円 |
40歳代 |
916万円 |
50歳代 |
1,386万円 |
60歳代 |
2,427万円 |
若い世代は結婚、出産、子育て、住宅購入などでお金がかかるため、貯金に回せるお金を作るのに苦労する時期もあります。しかし老後生活を見据えた場合、できるだけ早めに貯蓄に回せる分を確保していく意識を持ちましょう。たとえば、マイホームのローンを完済した後や子どもの教育費がかからなくなったタイミングなどを目途にするのが良いでしょう。
参照:家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)
老後に必要な貯金の調べ方
老後にどのくらいの資金が自分たちには必要なのかを知るには「毎月の支出」「受け取れる年金額」の2つの数値が必要です。これらを使って、老後資金のシミュレーションを行いましょう。
①毎月かかる生活費を計算する
まず実際に、自分たちがどのくらいの金額をどのような項目に支出しているのかを確認する必要があります。光熱費や食費など季節で変動する項目もありますので、1年を通した平均月額を算出してください。持家の場合は固定資産税やメンテナンス費、将来的に想定されるリフォーム代なども含めると良いでしょう。
②老後の年金支給額を計算する
老後の収入源となる年金支給額を「ねんきん定期便」で把握します。ねんきん定期便は日本年金機構から送られてくる年金記録であり、「ねんきんネット」でも確認できます。夫婦2人であれば両方を合計した受給額を、個人年金保険といった私的年金に加入している場合にはその金額も含めましょう。
ちなみに令和4年4月分からの年金支給額は以下のようになっています。リタイヤした後も就業を続ける場合は、その収入額もプラスします。
国民年金(老齢基礎年金)満額 |
月額64,816円 |
---|---|
厚生年金※ |
月額219,593円 |
※平均標準報酬43.9万円にて40年間就業した場合
参照:日本年金機構
③老後資金シミュレーションで差額を把握する
毎月の支出と年金支給額(収入額)を用いて、どのくらいのお金が必要になるのかシミュレーションしてみましょう。65歳から10年、20年、30年の長さを想定し、それぞれの必要資金額を算出してみると、具体的に資金形成の目標額を知ることができます。
老後に備えた貯金がない?堅実に老後資金をためる5つの方法
老後用に貯金をしていない人や貯金額がまだ不足している人は多いようです。リタイヤを目前に控えている人は「退職金」を充てにする方法や「投資」で資産を増やすという手段があります。そのため、老後まで時間がある人は「定期預金」「財形貯蓄制度」「貯蓄型保険」「投資」などの方法で資産形成を行っていくことをおすすめします。
そこで老後資金をためる方法について、1つずつ解説していきましょう。
退職金
企業に勤めていた人は、退職時に退職金を受け取ることができます。勤続年数に比例して退職金額は増加する傾向であり、定年まで勤めた場合にはかなりまとまったお金が支給されます。
日本経済団体連合会が2年毎に行っている「退職金・年金に関する実態調査(令和3年)」によると、管理・事務・技術労働者(総合職)の60歳で受け取れる退職金の平均額は、大学卒(勤続年数38年)は2,243.3 万円、高校卒(勤続年数42年)では1,953.0万円となっています。
長く勤めればその分退職金も増えますので、できるだけ定年まで勤めるようにしましょう。
参照:日本経済団体連合会
定期預金
給与から自動的に定期預金へお金が流れるようにすれば、強制的に貯金額を増やしていくことが可能です。給与から無駄な出費を出すことを防げますので、早めにこのように設定しておくことをおすすめします。
財形貯蓄制度
企業に勤めている人は、会社の福利厚生として「財形貯蓄制度」が用意されている場合もあります。給与から天引きして社内で貯蓄していく形になり、金融機関の定期預金よりも利回りが良いのが特徴です。
貯蓄型保険
民間の保険会社では、個人年金保険や養老保険、積立保険といった金融商品を取り扱っています。これらの商品は積立もしくは一括払いで支払った保険料が、満期になると増えて戻ってくる仕組みです。また保険期間中に万が一のことがあった際には設定された死亡保険金が支払われます。
こちらも金融機関の普通預金や定期預金より利回りは良いのが特徴です。ただし、早期の段階で途中解約してしまうと収支がマイナスになってしまいますので、気をつけてください。
投資
投資で資産を増やす手段もあります。投資の初心者ならば、中長期の運用となる不動産投資や投資信託がおすすめです。特に不動産投資は安定した収入が得られることから、ミドルリスク・ミドルリターンであるのが特徴です。
FX投資や国内株式投資など短期間で積極的に投資を行う方法もありますが、かなり専門的な知識が必要ですので、上級者向きです。
まとめ
老後資金を形成するには生命保険の活用する方法などさまざまなものがありますが、本業で時間が確保できない人ならば、手間のかからない不動産投資が向いています。不動産投資ではローンを完済すれば家賃収入だけが残りますので、老後生活に入っても生活費を家賃収入で補うことが可能です。老後資金に不安のある人は、不動産投資などの資産形成方法を検討してください。